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春の腕力トレーニング

新刊書店と古書店の違いはいろいろありますが、
その一つに「古書店には本のメンテナンスがある」。

埃を払い、ヤニを拭い、ほころびを補強して。
中でも一番厄介なのが「線引き、書込み」を消す作業です。

先日、とある先生のお宅に買取にうかがい、岩波文庫が
ごそっと入荷しました。世界文学、日本文学、古典文学に
「青」と、岩波文庫ファンなら思わずワクワクするような
ラインナップです。

ところがやはり。

大変勉強熱心な方で、あれにもこれにも線引きが…。
線引きのある本というのは、残念ながら、がくんと
商品価値が下がってしまいます。

ではどうするか。

・「線引き」があることを明記してたたき値で売るか

・消せるものなら気合をいれてきれいにするか

のどちらかです。ボールペンや蛍光ペンなどがんばりようの
ないものは迷わず前者。読めればいい、という人には
とても嬉しい商品になります。

線引きのある本でも持ち主の性格によっては
前半みっちり後半サッパリで割と消すのが楽なこともあります。
上下巻で下巻は美品というのも珍しくありません。

しかしながら今回は違います。どれも油断なく最後までしっかり
読み込んだ軌跡が残っています。

くぅ……。手強い。

単価が高くない本にはあまり手をかけられないもの実情ですが
せっかくの本だから、きちんとした状態でお店に出してあげたい
親心もあるのです。

そんなわけでせっせこせっせこチマチマと消しゴムをこする日々です。

古本屋の裏話。線消しで一番やっかいなのはなんだと思いますか?

それは「つい読んでしまうこと」なんです。わざわざ線を消そうという
ほどの本ですから、面白い良書ばかり。それを読まずに線を追う
のはなかなか苦しい作業です。見落としがあってもいけないから
しっかり見なくてはいけないけれど、読んでいては仕事にならない。
本好きならこのジレンマをおわかりいただけるでしょう。

人は思考するもの。わたしは考えました。
天地を逆さにして後ろから消していけばいい!!

レジカウンタで、そんな姿をみかけたら、その本はよほどおもしろい
本なんだろうなぁとお考えください。

(あぁー、でもめんどくさい!線引きありの安値で自分で買って
しまおうかと逡巡しながらもひたすらゴシゴシ)

本当に欲しい人のもとに渡りますように。ゴシゴシ。ゴシゴシ。
by endoushoten | 2008-04-23 15:59 | すずらん通り本店
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